ppm「納豆」を特捜せよ!~ペットに納豆は効果的か?(前編)~

心筋梗塞や脳梗塞などの血栓疾患が日本人の間で増えているとか、いないとか・・・
実際、日本人の死因のトップ3に脳血管疾患はランクインしている。また「寝たきり」の原因を調べてみると第1位が脳血管疾患である。
一方で2005年世界寿命ランキング(人間開発報告書2007/2008)では、第1位 日本、第2位 香港、第3位 アイスランドとなっている。なぜ日本人は長生きなのか不思議である。

日本人が長生きする仮説の一つが「納豆」だとか、そうでないとか・・・
その仮説を支持してもよさそうだと感じた衝撃的な言葉がこれである。
「人工的に血栓を作り、その上に納豆をのせると血栓が溶ける。」
とてもリズムカルな言葉だが、「切れないハサミは、アルミ缶を好きなように切ってから使うと良く切れるようになる」などの伊藤家の食卓に登場する裏技ではない。
これは台所の排水パイプの内壁に付着した汚れやヌメリを強力に溶かしてスッキリ落とす「ルック 濃効パイプマン」の作用に似ている。まさに納豆は「血管のパイプマン」である。

パイプマンが汚れを溶かすメカニズムは別として、納豆が血栓を溶かすメカニズムを知りたい。
納豆菌が大豆を餌にして、作り出される酵素が納豆キナーゼ(Nattokinase)で、その殆どはネバネバの中に含まれる。この納豆キナーゼが非常に強力に血栓を溶かしてくれるのである。実際、血栓のある人が納豆を食べてみると、血栓の分解物(FDP)が増加するメカニズムがある。つまり排水パイプに例えるなら、「パイプマンを使うと排水パイプに溜まっていた毛や汚れが下水にドバッと流れ出る」イメージである。納豆キナーゼにはこのようなパイプマン効果(血栓溶解作用)だけではなく、血栓そのものをつくりにくくする作用(抗凝固作用)があることも明らかになっている。

病院で使用する血栓溶解剤の代表選手は「ウロキナーゼ」や「TPA」。心筋梗塞の発作に対して発症後6時間以内にウロキナーゼ゙を20~30万単位使うみたいだが、単純計算でこのウロキナーゼ゙の量に相当する納豆キナーゼの量は、市販の納豆1パック(約50g)に値するとか…さらにウロキナーゼは血液中で猛スピード(半減期4分~)で分解処理されてしまうが、納豆キナーゼは4時間後に効果が最大となり、その後6~8時間は効果が持続することが分かっている。さらに納豆には血圧を下げる成分(アンジオテンシン変換酵素阻害ペプチド)が含まれており血圧の上昇を防ぐ効果がある。


<中日ドラゴンスの3番森野選手と同じくらい期待している猫と犬の予防的納豆療法対象疾患>
1.肥大型心筋症 (猫)
2.脳梗塞(犬/猫)
3.認知症(犬/猫)
4.尿失禁 (犬)

実際どれくらい納豆を食べれば血栓予防効果があるかという数字は見当たらないが、目安は以下の通りである。
①市販の納豆の平均活性=約40FU/g
②人の納豆の必要摂取量=2000FU/day
従って人は1日に約50gの納豆を食べればよい。市販されている発泡スチロールの納豆1パックが約50g(1カップ=30g)なので、結論的には1日1パックを食べればよい算数となる。人では脳梗塞や脳血栓は夜間の就寝中に起きやすいので、脳梗塞の予防のために摂取するのであれば夕食時が効果的といわれている。
これらのデータを猫や犬にかなり大雑把に換算・外挿して、仮に猫や犬に納豆を食べさせるならば・・・

猫:納豆1/4~1/6パックを夜1日1回
小型犬:納豆1/6~1/4パックを夜1日1回
中型犬:納豆1/4~1/2パックを夜1日1回
大型犬:納豆1/2~1パックを夜1日1回natto

でどうだろう・・・部活の先輩にコンビニで 「“うまい棒”をおごってやるから好きな味を選べ」と言われたら、まず「だいじょうぶっす」と軽く断った後、迷わずチーズ味とサラミ味を選択するだろう。なっとう味も捨てがたいが納豆キナーゼは含まれていないので血栓溶解効果はない。

今後、ワンコやニャンコも人間と同じように超高齢化社会を迎えることになり、脳血管疾患が増え、人間と同じように介護が必要となる可能性が非常に高い。納豆が猫や犬の脳血管疾患に対して予防的となることを裏付けるデータはほとんどない(ビーグル犬での未発表データはある)が、もしかしたら血栓が出来やすい状況に対する予防として補助的な効果があるかもしれない・・・


<監修>
須見 洋行
略歴
1945年奈良県生まれ。1974年徳島大学医学部大学院終了。シカゴマイケルリース研究所文部省在外研究員、宮崎医科大学生理学助教授を経た後、1997年より倉敷芸術科学大学機能物質化学科教授に。通産省外郭団体JTTAS「天然物・生理機能素材研究委員会」会長。医学博士。“納豆博士”の異名でTV,ラジオなどマスコミでも活躍。

<参考サイト>jhh
「納豆の効能―血栓溶解作用」

<参考文献>
H. Sumi and C. Yatagai, Soy in Health and Disease Prevention 15, Fermented Soybean Components and Disease Prevention, Sugano, M. ed., Taylor & Francis, ACRC Press Book, New York, p.251-278, 2005
Keiko Nishimura et.al, Clinical evaluation of natto diet in centralretinal vein occlusion, Basic and Clinical Aspects of Japanese Traditional Food Natto vol.1,1994.
H.Sumi,C.Yatagai and Y.Kozaki(1998)Menaquinone types pf vitamin K (MK-4 and MK-7)increased after ingesstion of phylloquinone foods., Fibrinolysis,in press
H.Sumi and C.Yatagai(1996) A very strong activity of pro-urokinase activator in ''natto",the tradittional fermented soybean in Japan, Fibrino1ysis,10(supp1.3):31
H.Sumi, C.Yatagai and N.Kishimoto (1996) Fibrino1ytic and anti-p1atelet aggregationactivities the japanese fermented soybean' ゛natto",Int.J.Haemato1.,64(supP1.1):S51・52
須見洋行,ナットウキナーゼの機能性研究の動向について,Food Style 21,10:1-5,2006
須見洋行,納豆の歴史と機能成分,日本味と匂学会誌,14:129-136,2007
納豆の科学,木内幹,永井利郎,木村啓太郎編,第4章納豆の機能性に関する研究(1.ナットウキナーゼ p.53-57),第11章納豆を利用した新商品開発(2.ナットウキナーゼ製剤 p.244-246),建帛社,2008
須見洋行,馬場健吏,岸本憲明(1997)各種穀類からの血栓溶解酵素ナットウキナーゼ及びプロ‐ウロキナーゼアクチベーターの発酵産生,日本農芸化学会1997年度大会
須見洋行・本田治・今村雅弘・川崎貞道(1997)納豆及びフィロキノン食品摂取後のビタミンK類(K1,MK-4,MK-7)の血中動態、日本血栓止血学会誌,8:287
須見洋行(1996)血栓症(脳卒中・心筋梗塞・ボケ…)からO-157まで納豆が効く!!薬餌としての威力を見よ!!、現代農業、75(12):54・57