多くの動物は、体内に敵(細菌やウイルスなど)が侵入しても感染せず病気にならないし、もし発病しても多くは治癒します。これは生体が敵(細菌やウイルス)を排除するシステムを持っているからです。この外敵に対する整体の防御には3つの壁が存在します。

 

1つ目の壁:皮膚や粘膜による物理的な壁

皮膚や粘膜という壁を敵が突破して体内に侵入すると「感染」となります。これを防止するには飽きるほど聞いた「密閉空間」、「密集場所」、「密接場面」を避けて手洗いやマスクで応戦するしかありません。

 

2つ目の壁:自然免疫部隊

皮膚や粘膜を突破して体内に侵入してきた外敵(ウイルス)に対して初期段階で攻撃を仕掛けて最前線で外敵を排除する緊急防衛システムです。攻撃を仕掛ける自然免疫部隊の兵士は「好中球」「マクロファージ」、「樹状細胞」、NK(ナチュラルキラー)細胞などの食細胞(貪食細胞)で、敵を「食べる」ことが専門の特攻隊です。これらの免疫細胞が常に体内をパトロールしており敵が侵入すると素早く攻撃を加える臨戦体制となっています。

ウイルスは物質(自分で増殖できない)と生物(自分で増殖できる)の中間です。つまりウイルスは自分1人では増殖できません。だから自分で増殖できる生物と物質の中間に位置する。じゃあどうやって増殖するか?っていうと他の生物の細胞に無理やり入り込んでその細胞が増殖する仕組みを利用して増殖します。つまり他の細胞を”ハイジャック”します。細胞の中に入り込まれると「食べる」ことが得意な自然免疫部隊の兵士には手に負えなくなるんです。そこで最前線の斬りこみ隊長であるNK細胞が出動し、皮膚や粘膜の壁をくぐり抜けて、体の中へと侵入してきたウイルスに感染した細胞を見つけると、NK細胞が徹底的にその感染細胞を攻撃して破壊します。

 

3つ目の壁:獲得免疫部隊

自然免疫部隊の攻撃でも撃破できない場合には獲得免疫部隊が出動するという“2段構え”で迎撃します。獲得免疫部隊は、敵の特徴をしっかり分析し、厳密に見分け、それを記憶することで、同じ敵が襲来した時に効果的に敵を強烈に迎撃する防衛システムです。自然免疫部隊に比べると、発動するまでにかかる時間がかかります。ここで活躍している兵士は、司令塔であるT細胞(細胞障害性T細胞やヘルパーT細胞など)やB細胞といったリンパ球です。

ウイルスが細胞内に入る前ならBリンパ球が作った飛び道具である免疫ミサイル(抗体)で迎撃します。次にウイルスが細胞をハイジャックして細胞内に侵入した場合は、感染細胞は黙っているわけでなく、1型インターフェロン(IFN-α、IFN-β)という物質を作って感染した細胞を破壊します。さらに殺し屋(キラー T細胞)が登場して、ウイルスに感染した感染細胞ごとドカンと爆破するんです。そのあと死んだ細胞の破片をマクロファージが食べて後片付けをします。

樹状細胞は敵を「食べて」取りこみ、それらを小さく(ペプチドに)分解します。そして、海外ドラマ「24-TWENTY FOUR-」でいうとCTU(テロ対策ユニット)に相当するリンパ節や脾臓に移動して、獲得免疫部隊で働く司令塔であるT細胞に、連絡します(抗原提示)。樹状細胞から連絡を受けた敵に対して反応することのできるT細胞のうち、ヘルパーT細胞は、自然免疫部隊として敵を食べる兵士(食細胞)に対して、その攻撃力を増強させるようにも働きかけています。このように獲得免疫部隊は強い破壊力を持ち、自然免疫部隊と密接な連携プレーで強力な敵に徹底抗戦します。

 

<新型コロナウイルスCOVID-19の特徴>

ウイルスの生息時間

・空気中のエアロゾル状態:3時間

・ダンボール:24時間

・ステンレスやプラスチックなどの表面の場合:3日

・銅製品の表面:4時間

・体内:16−26時間

 

<新型コロナウイルスCOVID-19に感染するとどうなる?>

粘膜を突破して新型コロナウイルスが体内に侵入するとしばらく隠れる(潜伏期間7-14日)

同時に自然免疫部隊が発動し見事コロナウイルスを撃破すると無症状で治癒する(不顕性感染)。

ところが潜伏期間が終わった7-14日後に自然免疫部隊が負けてしまうと発熱や咳などの風邪症状(ウイルス血症)が出る。

そこで獲得免疫部隊が出動して見事勝利を収めると治癒する。ところが獲得免疫部隊でも太刀打ちできない強敵だと呼吸苦となり人工呼吸器などを駆使した集中治療が必要になり一部は治癒して、残りはコントロールができなくなった兵士の暴動(サイトカインストーム)により死亡する。

 

今できること

1.家にいる(Stay home!)

2.新型コロナウイルスの弱点は湿度に弱いので加湿器を使い、湿度50%で温度22.22度の空間を作り出す。

3.よく寝る(Good night!)。

4.よく食べる。

5.自然免疫部隊を活性化するために腸管免疫を強化する。

・発酵食品(納豆/キムチ/チーズ/味噌/塩麹など)をよく食べる。

・NK細胞を活性化する(乳酸菌の摂取、お笑い番組を見て笑うこと、軽い運動など)。

・オリゴ糖、ケストース(フラクトオリゴ糖)、ムチン(ネバネバ物質)をガンガン摂取して腸管に住む腸内フローラに好物(エサ)をプレゼントする。

 

体内に侵入したウイルスを直接攻撃する自然免疫の代表が NK細胞です。乳酸菌(Lactobacillus)) の中には,NK活性効果が証明されているものがあります。例えばある乳酸菌(Lactobacillus LGG 株)がロタウイルス性胃腸炎の重症化を抑えることに有効(Szajewska H,et al.JPGN 2001)であり、ガセリ菌(L.casei 菌株)が高齢者のノロウイルス感染の重症化の低減に貢献したと報告(Nagata S,et al.Br J Nutr 2011 )されています。大阪大学の研究チームによると乳酸菌などが産生する「乳酸」と「ピルビン酸」が、自然免疫部隊である小腸の「マクロファージ」に直接作用し、腸の細胞の間から樹状突起を伸ばし、腸の表面にいる病原菌を取り込んで殺す働きをしていることがマウスを使った実験で証明されています。

 

最後に

新型コロナウイルスのパンデミックで毎日不安な飼い主様に対して1人の獣医師としてできることは何か?を考え、「どうしたら新型コロナウイルスに感染するのか?」、「今何をしたらいいのか?」について免疫学を絡めて中学1年性でもわかるように噛み砕いてまとめて見ました。1日でも早く新型コロナウイルスと世界中の人類がバランスをとりつつ共存・共生し、僕らの住む地球がこれまで以上に平和になりますように・・・

 

東京動物アレルギーセンター 

センター長 

日本獣医皮膚科学会認定医

獣医学博士 川野浩志

 

診察室では伝えきれない有益な情報をアウトプットするため、中学2年生でも理解できるような言葉で噛み砕いてわかりやすく表現することにコミットしてメルマガを続けています。カップ麺にお湯を注いで食べるまでの隙間時間や新橋ー東京区間でも読めるくらいにギュッとコンパクトにまとめて発信していますので興味のある方はどうぞ。

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参考サイト
ノーベル生理学・医学賞を受賞した山中伸弥( iPS細胞研究所長)先生の特別サイト
山中伸弥による新型コロナウイルス情報発信」が参考になります。